2012/06/28
6月も最終週、高校は試験週間真っ只中です。高木ゼミ新知校は、大きなカバンを抱えた高校生で連日にぎわっています。もちろん、<静かに>、にぎわっているのですが…
――え?
「やっぱり難しいですか?」
――う〜ん…これ、読めばいいんじゃないの?
「読む?」
――ちょっと待ってて……
で、彼(彼女)が持ってきた参考書をしばし熟読。
「直線状の棒の上に、P、Q、Rの3点があって、で、それぞれに1N、4N、2Nの力がかかっていて…でぇ〜?モーメントを求める…モーメントとは…」
とか
「組成式では陽イオンと陰イオンのどちらを先に記すか…多原子イオンと単原子イオンが…」
――○○クン(あるいはサン)、これ、ちゃんと読んだ?
そう言って、彼(彼女)の参考書やら教科書やらを、パタパタ顔のあたりで振ってみせると…
「なに書いてあるかわからないんですよ〜」
ヨクデキル子どもたちでも、こういう質問が意外に多いんです。自分の頭や心に、スッと入ってくるモノしか受け付けない。
――○○クン(あるいはサン)、グローバリズムって聞いたことある?
「へ?<世界基準>ってやつですか?」
――う〜ん、微妙に違う気がするけど、まぁいいや。で、そのグローバリズムが、君たちが生きて行く社会では大切だってのもわかってるね?
「だから英語を勉強して、いろんな国の人とコミュニケーションをする。<異文化コミュニケーション>でしょ?」
――なぜ英語?そんなこと言ったらフランス人は怒るぞ。<英語は世界基準じゃない>って。ドイツ語や、ロシア語は?
「え?」
――そもそもだ、日本語で書いてある参考書すら理解しようとしないで、なんで異文化コミュニケーションなんてできるんだ?
「だって、これ、なに言ってるかわかんないんですもん」
――いいですか、<なにを言っているのかわからない、だから理解しようとしない>、なら、異文化コミュニケーションなんかできない、って言ってるんです。<よくわからないけど、この人、自分になにかを伝えようとしてる、なんなんだろ?>って考えに考えるのが大切なんでしょう。
「考えてますよぉ~、理解しようとして公式や単語も、覚えてますし……」
――で、モーメントのM=Faの公式を覚えていて、じゃあなぜこの問題が解けない?
英単語を覚えるのはとても大切なことだよ。でも、<この英文、なに言っているのかわからない。あ!単語力がないからだ>なんて安直すぎない?
「え???単語力じゃないんですか???長文、壁なんですよね~」
――○○クン(あるいはサン)は、英語と日本語で、どちらの方が単語力がある?
「そりゃ日本語です」
――にもかかわらず、英語に比べてはるかに単語力があるはずの日本語の文が読めないわけだ。そんな状態で、たとえ5000語6000語の英単語を覚えたところで、英文が読めるとお思いか?<この文章は私になにを伝えようとしているんだろう?>考えに考え抜いて、壁を突破 break through しなきゃ。
「なるほど…」
我ながらよいことを言った、などと独り悦にいっていると…
「で、先生、問題、わかりました?」
――………あ、問題ね……
モノを人に伝えるというのは実に難しいものです。
重岡先生より