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りんご

毎年この季節になると、亡き叔父からりんごが送られてきます。直径10センチほどもある「陽光」です。いつも大きな声で坂本九の歌を口ずさみながら下請けの町工場を切り盛りしていた明るい叔父が好きだったりんごです。

 

叔父の死の翌年、段ボール箱からこぼれ落ちんばかりにぎっしり詰め込まれたりんごを前に、叔母への礼状になんと書いたものやら思い悩みました。数日間あれこれ本棚をひっくり返した末に、宮澤賢治のことばを、礼状に書き添えることにしました。りんごの送り先である長野県と、宮澤賢治の詩の表題にある「青森」とは、遠く遠く離れているのですが……

 

こんなやみよののはらのなかをゆくときは

客車のまどはみんな水族館の窓になる

(乾いたでんしんばしらの列が

せはしく遷っているらしい

きしゃは銀河系の玲瓏レンズ

巨きな水素のりんごのなかをかけている)

りんごのなかをはしっている      (「青森挽歌」より)

 

あれから4年、今年もまた、数日間悩んだ末に、結局同じ詩句を書き添えて礼状を投函しました。巨きな「陽光」の赤に目を細めている私に、皮などむかずまるごとりんごにかじりついている私に、そしてなによりも「叔父のりんご」に、これほど深く切り込んでくることばには、まだ出会えていないものですから。

 
重岡先生より

プロフィール

Author:高木のせんせい
知多市、常滑市に校舎展開をしている進学塾高木ゼミのブログです。
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